将来の安心に繋がる:高齢者が知っておきたい公的な支援制度
高齢期の生活について、漠然とした不安を抱えていらっしゃる方も少なくないと思います。特に、物価の上昇などが続くと、将来の生活費について心配になることもあるかもしれません。
こうした不安を少しでも和らげるために、実は国や自治体には、高齢者の暮らしを支える様々な公的な支援制度があります。年金以外にも、いざという時に役立つ制度を知っておくことは、心のゆとりにもつながります。
この記事では、高齢者の方が利用できる可能性のある公的な支援制度について、その一例を分かりやすくご紹介し、どこで情報を得たり相談したりできるかについても触れていきます。
高齢期の暮らしを支える公的な支援制度の一例
公的な支援制度は多岐にわたりますが、ここでは高齢期に特に役立つ代表的なものをいくつかご紹介します。
医療費に関する支援
高齢になると、医療機関にかかる機会が増えることが考えられます。医療費の負担を軽減するための制度があります。
- 高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど) 同じ月にかかった医療費の自己負担額が、一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた分の金額が健康保険から支給される制度です。年齢や所得によって自己負担限度額は異なります。急な病気や入院などで医療費が高額になった場合に、家計の負担を大きく減らすことができます。
介護に関する支援
将来、介護が必要になった場合に備えるための制度です。
- 介護保険制度(かいごほけんせいど) 原則として65歳以上の方が、寝たきりや認知症などで介護が必要になった場合、または特定の病気が原因で介護が必要になった場合に、費用の一部を負担することで介護サービスを利用できる制度です。どのようなサービスをどのくらい利用できるか(要介護度)は、申請に基づいて判定されます。自宅での生活を支えるサービスや、施設に入所するサービスなどがあります。
住居に関する支援
住み慣れた自宅で安心して暮らすためや、住み替えに関する支援もあります。
- 高齢者向け住宅(こうれいしゃむけじゅうたく) バリアフリー設計であったり、安否確認や生活相談サービスが付いていたりするなど、高齢者の暮らしに配慮された住宅です。公的なもの(例:サービス付き高齢者向け住宅の一部)や民間のものなど、種類があります。
- 住宅改修に関する支援 自宅で安全に生活できるよう、手すりの設置や段差の解消などのバリアフリー改修を行う際に、自治体によっては費用の一部を助成する制度があります。
経済的な支援
所得が低い方向けの支援や、一時的に資金が必要になった場合の貸付制度などがあります。
- 生活福祉資金貸付制度(せいかつふくししきんかしつけせいど) 所得の低い方や高齢者、障害のある方などが、生活を立て直したり、必要な資金を借り入れたりすることができる公的な貸付制度です。一時的にまとまったお金が必要になった場合などに相談できます。
どこで情報を得て、誰に相談すればよいか
これらの公的な支援制度は、ご自身の状況によって利用できるものが異なります。制度の内容は少し複雑に感じることもあるかもしれません。
最も身近で、信頼できる情報源・相談先は、お住まいの市区町村の役所・役場です。
- 市区町村の担当窓口: 福祉課、高齢者支援課など、高齢者や福祉に関する担当部署にご相談ください。制度の概要説明や、申請手続きについて教えてもらえます。
- 地域包括支援センター(ちいきほうかつしえんセンター): これは、高齢者の皆さんが住み慣れた地域で安心して暮らせるように、様々な面から支えるための総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、介護、医療、健康、福祉、権利擁護(けんりようご:悪質なセールスなどから高齢者を守ること)など、様々な相談に無料で応じてくれます。多くの市区町村に設置されていますので、まずはこちらに相談してみるのも良いでしょう。場所が分からない場合は、市区町村の役所・役場に問い合わせてみてください。
ご友人や知人からの口コミも参考になることがありますが、制度は法改正などで変わることもありますし、お住まいの地域によって詳細が異なる場合もあります。必ず役所や地域包括支援センターなどの公的な窓口で、最新かつ正確な情報を確認するようにしてください。
また、公的な制度を装って個人情報やお金をだまし取ろうとする詐欺(さぎ)も残念ながら存在します。公的な機関が、電話や訪問で突然、個人情報を詳しく聞いたり、手数料としてお金を求めたりすることは基本的にはありません。「おかしいな」と感じたら、すぐに契約したりお金を支払ったりせず、ご家族や先ほどご紹介した地域包括支援センター、警察の相談窓口(#9110番)などに相談してください。
まとめ
高齢期の暮らしには、様々な変化や不安が伴うことがあります。しかし、国や自治体には、皆さんの生活を支えるための公的な支援制度が整っています。
これらの制度について「知っている」ということだけでも、将来への漠然とした不安を軽減し、安心感を持つことにつながります。制度の具体的な内容は、ご自身の状況やお住まいの地域によって異なりますので、この記事でご紹介したのはあくまで一例です。
何か心配なことや、「もしかしたら利用できるのでは?」と思う制度があれば、一人で悩まずに、まずは市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してみることをお勧めします。対面や電話で、専門家が親身に話を聞いて、利用できる制度や必要な手続きについて丁寧に教えてくれるはずです。
ご自身の暮らしを守り、安心して豊かなセカンドライフを送るために、これらの公的な支援制度をぜひ活用されてください。