高齢期のお金、まずは『見える化』から始めましょう ~あなたの資産をまとめて把握する第一歩~
どなた様にも、ご自身のこれまで築いてこられた大切な財産があるかと存じます。預貯金を中心に、保険や年金、もしかすると少しの株式や投資信託をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
日々の生活は安定していても、物価の上昇や将来への漠然とした不安から、「私のお金はこれで大丈夫かしら」「私が何を持っているか、きちんと把握できていないわ」とご心配になることもあるかと存じます。
しかし、ご安心ください。将来のお金の計画を立てたり、安心して日々を過ごしたりするためには、まず「ご自身の資産が今、どのような状態にあるのか」を正確に把握すること、つまり「見える化」することが大切です。これは決して難しいことではありません。
この記事では、高齢期のご自身の資産を無理なく「見える化」するための、分かりやすい手順をご紹介いたします。
なぜ、今、ご自身の資産を「見える化」する必要があるのでしょうか?
ご自身の資産を「見える化」することには、いくつかの大きなメリットがございます。
- 安心感が生まれる: ご自身の財産全体を把握することで、「これだけあるのだから大丈夫」という安心感が生まれ、将来への漠然とした不安が和らぎます。
- 計画が立てやすくなる: 今後の生活費や、もしもの時の備えについて、具体的な計画を立てるための土台となります。
- 管理がしやすくなる: どこに何があるかが分かれば、必要な時に必要な情報を取り出しやすくなり、管理の手間が省けます。
- 詐欺被害を防ぐ一助となる: ご自身の資産状況を把握していれば、怪しい電話や訪問に対して「私の資産はこうなっているから、この話はおかしい」と気づきやすくなり、詐欺から身を守ることに繋がります。
- ご家族との情報共有に役立つ: 万が一の際に、ご家族が慌てずに手続きを進められるよう、ご自身の財産についてスムーズに情報共有ができるようになります。
ご自身の資産を「見える化」するための具体的なステップ
デジタル機器の操作が苦手でも大丈夫です。紙とペン、そしてファイルボックスなどがあれば十分に始められます。
ステップ1:持っているものをリストアップする
まずは、ご自身がどのような財産をお持ちか、思いつく限り紙に書き出してみましょう。
- 預貯金:
- お使いの銀行名、支店名
- 普通預金、定期預金など、口座の種類
- 大まかな残高が分かるもの(通帳や残高証明書など)
- 保険:
- 加入している保険会社名
- 生命保険、医療保険、個人年金保険など、保険の種類
- 保険証券や契約内容が分かる書類
- 有価証券:
- 証券会社名(もしあれば)
- 持っている株式や投資信託の種類
- 取引報告書や残高報告書など
- 不動産:
- お住まいの自宅や、所有している土地・建物
- 権利証(登記済証、登記識別情報)など
- その他:
- 個人年金(年金証書など)
- 貴金属や骨董品など、価値のあるもの
最初は正確な金額でなくても構いません。「○○銀行に預金がある」「△△生命の保険に入っている」というように、大まかに書き出してみましょう。
ステップ2:関連書類を一つの場所に集める
ステップ1でリストアップしたものに関する書類(通帳、保険証券、契約書、権利証など)を、探しやすいように一つの場所に集めてみましょう。
ファイルボックスやクリアファイルなどを活用し、項目別に分けて整理すると、さらに分かりやすくなります。
ステップ3:リストと書類を照合し、状況を記録する
集めた書類を見ながら、ステップ1で作成したリストをより具体的にしていきましょう。
- 通帳を見て、おおよその残高を書き加える。
- 保険証券を見て、保険の種類や契約日などを確認する。
- 年金証書で年金額を確認する。
正確な数字でなくても、ご自身が「これくらいあるのだな」と把握できる程度で構いません。ノートにまとめたり、簡単な表を作成したりするのも良い方法です。(【図1:手書きのリストの例】のようなイメージです)
重要なのは、ご自身が理解しやすい形で記録することです。
ステップ4:保管場所を決める
作成したリストや集めた書類を、安全で、かつご自身が必要な時にいつでも取り出せる場所に保管しましょう。
また、もしもの時にご家族が困らないよう、これらの書類の保管場所や、どこに何があるかのリストについて、信頼できるご家族に伝えておくことも検討しましょう。
「見える化」を継続するために
一度「見える化」ができたら、それで終わりではありません。ご自身の資産は増減しますので、定期的に見直すことが大切です。
年に一度など、ご自身で決めたタイミングで、リストの内容と現在の状況が合っているか確認してみましょう。大きな金額の出し入れがあったり、新しい保険に加入したりした際には、その都度リストを更新すると良いでしょう。
デジタルが苦手な方へ
インターネットでの管理やパソコンでの入力が苦手な場合でも、心配いりません。
- 手書きのノートやファイルボックス: これらが最も身近で、デジタルが苦手な方でも取り組みやすい方法です。ご自身の使いやすいように工夫してみましょう。
- 金融機関の窓口: 銀行や郵便局の窓口で記帳をしたり、残高証明書の発行をお願いしたりすることができます。保険会社や証券会社に問い合わせて、契約内容を確認することも可能です。
- 自治体や専門家の相談窓口: 一人での整理が難しい場合は、自治体によっては高齢者向けの暮らしの相談窓口を設けているところもございます。また、有料にはなりますが、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談し、資産整理のアドバイスを受けることもできます。ご家族や信頼できる方にご相談いただくことも大切です。
まとめ
ご自身の資産を「見える化」することは、将来への漠然とした不安を和らげ、安心感を得るための大切な第一歩です。
最初は面倒に感じられるかもしれませんが、一つずつ、ご自身のペースで進めてみてください。難しい言葉を使う必要はありません。ご自身が分かれば十分です。
「見える化」を通じて、ご自身のこれまでのお仕事や日々の暮らしが形になった財産を改めて確認し、これからの豊かな高齢期を過ごすための計画を立てる力にしていただければ幸いです。
もし、途中で分からないことや不安なことが出てきた場合は、一人で抱え込まず、ご家族や信頼できる方に相談したり、自治体の窓口や専門家を頼ったりすることも考えてみてください。